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現代のスマート(賢い)爆弾に話を戻すと
↑に貼った爆弾は自由落下爆弾の先端に赤外線レーザーを関知するセンサーを取り付け、後部に赤外線レーザー関知センサーの情報に対応して姿勢偏向するための舵を取り付けただけの物なのですが、これがスマート爆弾なのです。
そしてその作動原理ですが、まず爆撃目標に対して赤外線レーザーを照射すると爆撃目標に当たった赤外線レーザーは円錐状のスポットライトのように反射されます。
この円錐状のスポット反射の中に爆弾を投下すれば爆弾は落下していく過程でスポット反射の範囲から外れそうになる度に赤外線レーザー関知センサーが関知してその情報に反応してスポット反射の範囲から外れないように舵取りが繰り返され命中する時には目標のど真ん中に命中するという仕組みになっています。
したがって現在のこの種のスマート爆弾の命中精度は物凄く高く今やどの建物を狙うかではなく、どの窓を狙うかという程に高精度化しています。
ベトナム戦争の後期には実用化されていましたが、あまり取り上げられることはなく大々的に注目されるようになったのは湾岸戦争でアメリカ軍がステルス攻撃機に搭載して少数精鋭で大戦果を挙げて以降です。
たとえ少数機であってもほぼ百発百中に近いスマート爆弾とほとんどレーダーに映らないステルス攻撃機で夜間に奇襲攻撃をするという組み合わせは極めて絶妙で攻撃を受けたイラク軍はなすすべもなかったのでした。 -
昔だったら大型爆撃機を数十から百機程度の大集団で投入し併せて護衛戦闘機などの各種支援機も随伴させなければならず爆弾の命中精度も悪い上に大集団で出かけるということは敵の攻撃による損害を受けるリスクも大きかったことを考えると非常に効率の悪いものでした。
湾岸戦争初戦のアメリカ軍のような運用を行えば爆弾の無駄も少なく支援機もほとんど不要でほんの数機のみで出かけるためステルス特性とも相俟って損害を受けるリスクもかなり低減されるという相乗効果がもたらされました。
そのため爆撃で破壊する目標(敵の基地、飛行場、兵器生産工場などの比較的広大な敷地にある施設)を爆撃して破壊するためにはちゃんと目的を達成し破壊しようとすれば大型の双発爆撃機か四発重爆撃機を数十機から百機程度もの大集団で投入し出撃させないとダメでした。
それだけこの当時の爆弾は命中精度が悪かったということです。
本来狙っていた目標物から数十から数百メートル離れた距離に着弾することは日常茶飯事で命中しなくても至近距離に落ちれば良くやったといわれるレベルでしかありませんでした。
この現実を考えるとヒトラー総統をはじめとする急降下爆撃機擁護派の人たちが急降下爆撃機のピンポイント爆撃能力に魅了されていた気持ちも判らなくもないなと感じます。